湿原のヒメヒカゲ

かつて、愛知県内のあちこちで見られたCoenonympha oedippus arothiusヒメヒカゲだが、最近は撮影できる場所が少なくなっている。

G9pro+μZD17mm、雄の追尾飛翔、新城市、2019.06.12

この時期、近場での撮影種の多くはゼフィルスと呼ばれるシジミチョウであることが多いが、今回はこの蝶のために2度足を運んだ。飛翔写真を撮りたくて訪れたのだが、6月8日の撮影では、思ったような感じではなく、再度出かけたわけだ。

1時間にも満たない撮影であったが、膝を悪くしているので結構しんどい撮影となった。結果としては満足のいくものでないが、現状ではやむを得ない。

さて、何で今?何で今更?ではあるが、昨年くらいから都道府県の蝶を選定しようとする動きがあり、愛知県ではほぼ満場一致(どこが決めるのか)でヒメヒカゲになると思われる。

理由としてはいろいろあるが、県条例で採集(すべてのステージ)を禁止していること、開発を免れた湿原にのみ残ったシンボリックなチョウであることが大きい。

近県ではどうだろう、例えば岐阜県ならギフチョウ、三重県ならキリシマミドリシジミあたりが有望で、異論もないところだろう(どちらも美麗種)。それに比べると、ヒメヒカゲは一般受けしにくいチョウではあるが、これ以外の候補となると思い浮かばない。かつて、尾張平野や西三河地域に多くのヒメヒカゲが棲息していたと思われるが、農業用水の整備に伴い不要となったため池の埋め立てなどに伴い消滅したのだろう。言い換えれば、工業製品の生産基地としての役割と引き替えに減少してきたが、今では細々と生き延びている、ということ。

ヒメヒカゲ♂の後翅裏面の眼状紋は4個が最も多い。この個体は4個+ちっちゃいのが1個で、鮮度もまあまあである。

G9pro+μZD17mm、ヒメヒカゲ♂、新城市、2019.06.12

上と同じ個体

上と同じ個体

せっかくピントが来ても草に隠れてしまうことが多い中、何とか。

G9pro+μZD17mm、ヒメヒカゲ♂、新城市、2019.06.12

ブロックするように撮影すると、裏面も撮れることがある。

G9pro+μZD17mm、ヒメヒカゲ♂、新城市、2019.06.12

上翅裏面にわずかに眼状紋が現れることもある。

G9pro+μZD17mm、ヒメヒカゲ♂、新城市、2019.06.12

こちらは上から押さえつけるように撮影

G9pro+μZD17mm、ヒメヒカゲ♂、新城市、2019.06.12

メカニカルシャッターを使用しているので、タイムラグはほとんどないはず?

G9pro+μZD17mm、ヒメヒカゲ♀、新城市、2019.06.12

雌は比較的ゆっくり飛ぶので、撮りやすいはずだが?

G9pro+μZD17mm、ヒメヒカゲ♀、新城市、2019.06.12

何とか画面の端に雌を追う雄の姿が入った。

G9pro+μZD17mm、ヒメヒカゲ、新城市、2019.06.12

このような湿原でもペットボトルが捨てられている。植物の観察者が捨てたのであろうか?それとも・・・。

いつまでもこの蝶が見られればよいが、この湿原でもかつては間違いなく棲息していたゴマシジミとヒメシジミは、すでに見られなくなって久しい。開発によって多くの棲息場所が奪われ、採集者によってとどめが刺される。先進国と自負する我が国で、やっていることは所詮そんなレベルである。

今回1時間にも満たない間にシャッターを1,500回以上切っている。ほとんどの写真は使い物にならず消去されるのみ、何とかならないか。