3月上旬の西表島は、未だ冬の気配が強かった

今回の目的は西表島でテツイロビロードセセリを探すことだったが、いかんせん、時期が早すぎたようだ。まあ、事前にいろいろ調べていたときにこのような事態は十分予想されたが、生来楽観的な自分としては、「行けば何とかなるんじゃないの」的な発想で出かけたんで、3月7日午後にポイントに到着した時点で「あっ、ダメだ」であった。海岸近くの湿地に生えているデリスには、全く新芽はなく、昨年伸びたと思われる葉だけが残っており、寒さと併せてこんな状況での撮影は無理と早々に判断した。

話を戻して、西表島へ到着した3月7日朝、日差しはなく肌寒い中、目的地とは別方向のサトウキビ畑に向かった。とりあえず、タヌキコマツナギを確認してからということでサトウキビ畑に到着すると、ほとんど花は付いておらずやはりちょっと早い感じがしたが、とりあえず釣竿で叩き出してみる。路の反対側にも生えているので、そちらも叩いてみるとかすかにハエとも蛾とも違った動きをする小さな虫が目に入ったので、近づいて確認すると間違いなくタイワンヒメシジミであった。その後、もう1頭見つけ撮影した後、西表半周のドライブ&ショートトレッキングへの出発である。

まだ、つぼみがほとんど付いていない食草を叩くと、飛び出して枯れたイネ科植物にとまった。強風の中、何とか証拠写真だけは撮ることができた。

タイワンヒメシジミ♀?、D600+200mmマイクロ、西表島、2014.03.07

さて、ここ西表島周辺ではこの10年くらいを見ても、迷蝶が定着したり、消えていったりしている。亜熱帯に属しそれほど大きくなく、適度な山もある八重山の島々では、生態系の多様性が絶えず変化しながら保たれているわけで、いつ新しい迷蝶が一時的に発生するかも知れない反面、その発生はいつ終わるか知れないのである。タイワンヒメにしても、絶えず手が入れられているサトウキビ畑やその周辺で細々生き残っている食草だけが頼りなわけで、いついなくなってもおかしくない。

また、一旦定着したかに思われても、本来の生息地でない場所で天敵などから逃れて生き延びられる保証はなく、故に見られるうちに撮影しておかないと、ヒメウラボシシジミやカバタテハのようにいついなくなるか分からないのである。そういえば、キミスジってまだいるのかなあ。クロマダラソテツだってこれから先どうなるかわかんないものね。

樹上にとまったシロオビヒカゲ♂

E-M1+200mmマイクロ、西表島、2014.03.08

樹上の白い花に吸蜜に来ていたタイワンキマダラ♂

E-M1+200mmマイクロ、西表島、2014.03.08

上記の2種はこの寒いのに元気だね。シロオビヒカゲはもともと定着種だし、竹林がなくなるようなこともないので大丈夫として、タイワンキマダラは大して広くもない生息地にしっかりと根を下ろしてるよね。民有地の中の雑木林地帯で、開発されればひとたまりのない。

さて、次なる遠征は小笠原であり、長い船旅(船酔い)が待っている。楽しみなような憂鬱なような複雑な気持ちである。その前に、再来週くらいからギフチョウのシーズンが始まる。例年どおり静岡から始めるのか北陸へ行くのか、皆様の情報をお聞きしてからカタクリへとまるギフチョウの撮影に出かけることとしよう。